関西お好み焼き総研＋

　”下町系お好み焼き巡り”の達人、Ｋ氏に初めてお会いした。
関西の各エリアにおける土着の焼き方の話で大いに盛り上がったが、彼は「京
都東九条のべた焼き」に一番惹かれると言った。

彼が愛して止まない「べた焼き・ホルモン・激辛オリソース」、そして謎の酒
「赤」を求めて久しぶりに東九条へ行くことにした。


　　


ＪＲ京都駅に降り立つと、意外にも観光客の多さに驚く。蒸し蒸しと暑いこの
時期の京都にも夏休み中の学生や外人の観光客が集まっている。
そんな華やかな喧騒を横目に見ながら、私は地下鉄に乗り換えて、十条駅を目
指す。
京都市南区の「下町お好み焼きゾーン」は九条通りから南の十条通りにはさま
れたエリアに集中している。
そのひとつの理由が、「ツバメソース」の存在であろう。
ラベルにツバメのイラストをあしらったこの地ソースは、東九条にある「ツバ
メ食品」で製造されている。色んなタイプの製品があるが、私は自宅で激辛オ
リソースを愛用している。濃厚な辛さが病みつきになるマニア垂涎の一品であ
る。





さて、十条駅の地上に出た私は北東方向へ歩く。
懐かしい感じの路地裏が続き、こんなところにお好み焼き屋があるんだろうか
と思っていたら赤い幟を発見。幟には確かに「お好み焼」と染め抜かれている。
「京都下町系お好み焼きが恋しい！」というコミュを運営しているＫ氏が推薦
する「まつもと」である。





引き戸を開けると、既におっちゃん２人組が談笑しながらビールとお好みをや
っていた。店内は狭い。土間に２人用の小さな鉄板テーブルが３卓あるだけ。
近くの人気店「はやし」の店舗スペースの３分の１位しかないだろう。

取りあえずの瓶ビール（キリン大瓶）を注文し、壁のメニューから「油カス入
りをそばで！」と注文したが、おばちゃんはちょっと怪訝そうな顔をして「豚
かイカはどっちにします？」と訊き返した。
後で分かったことだが、豚焼きかイカ焼きにデフォで油カスが入るらしい。





おばちゃんの焼き方をじっくりと見る。

1.雪平鍋からしゃばしゃばの生地をお玉ですくって、丸く広げ粉かつおを振る。
2.ざく千切りしたキャベツを２つかみ乗せ、上に中華麺を無造作に広げる。
3.その上にタッパから取り出したイカ・油カス・ちくわを配置し、紅生姜を散
　らす。
4.４～５分間放置し、生地を少しだけ掛けてから裏返す。大テコで押さえ、じ
　っくりと焼く。
5.再度表に返せば、もう出来上がり。２種のソースの説明をしてくれる。
　私は普通ソース（ややサラサラ系）と激辛ソース（かなり粘度高し）を両方
　塗ってから、粉を振った。







うむ、素朴だ。イカが旨い。そして何より「激辛ソース」が素晴らしい。
卵が入らないつるんとしたお好み焼きの味わいは、キャベツの甘みとソフトな
中華麺とソースの刺激が演出する。
なんとも「プリミティブなお好み焼きの原点」であることよ！　感動した。
そんなことを考えていたら、隣りのおっちゃんたちはデザート？の「かき氷」
をうまそうに食い出した。








店を出て、河原町通り方面へ東進すると、途中小さな神社があった。
「宇賀神社」という目立たない神社であったが、由緒を読むと藤原鎌足にゆか
りのある古い旧跡であるらしい。
うむ、このようなところが”千年の都・京”の実力である。

　　　 静寂の　社にあそぶ　秋茜（あきあかね）　　ジミヘン

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（続く）


　　　　　　　　　　　　　　　　　
◇お好み焼き「まつもと」　京都市南区東九条明田町４２　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　イカカスそば入り　　　　６００円
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ビール（大瓶）　　　　　　５５０円