関西お好み焼き総研＋

　千林のおばちゃんは、独り言を言う。「ああ、暑い。あついなあ！」
この日はうんざりするような猛暑日だったので、まあ無理もないが‥。





京阪千林駅に降り立った私は、商店街の端から端までを完全制覇するため、
一旦右方向へ出る。スーパー玉出のハデな看板があり、矢印に従って進むと、
見慣れた黄色い建物が現れた。
テレビで見かける人懐っこい社長の顔を、思い浮かべた。大阪の庶民スーパ
ーは最近、黄色一色だ。大したおじさんである‥。昔ダイエー、今”スパ玉”
か？
千林商店街はスーパーダイエー創業の地として知られるが、創業者中内功氏
も、その１号店舗も既になく、会社の長期低落に歯止めがかからない。





さて、相変わらずの繁盛商店街である。携帯電話の販売店、銀行の支店、洋
装店、八百屋、キャベツ焼きの店など。「日本一安い商店街」を自称するこ
の商店街は近隣の主婦たちで、溢れかえっている。





とりあえず空腹を満たすために飲食店を探すが、意外にもその数は少ない。
そのとき、「力餅」の店舗を見つけた。よし、入ってみるか？

入り口で食券を買う。肉そばとおにぎりを念頭において、おばちゃんに尋ね
ると、おにぎりはないとのこと。赤飯では腹にたまりすぎる。
結局、「カツカレー丼」を注文することにした。この店はカレーうどんが人
気らしいので、間違いないだろう。





しばらく待って、運ばれた丼は私の予想とはちょっと違うものだった。トン
カツはカレーの中に沈んでいて、クリスピー感なし。そして、色が濃いカレ
ーは甘辛ダシが強くて、スパイシー感なしである。うむ、ザンネンなり。


気を取り直して、更に商店街をぶらぶらと歩く。
途中、右方向に繁華な通りが伸びていた。「今市商店街」という。そこを進
みテイクアウトのお好み焼き店を曲がると、パチンコ屋が見えた。
ダイエーの跡地がパチンコ屋に替わっているとの情報を得ていたので、近く
の店舗のおばちゃんに訊いてみた。「ここにダイエーがあったんですか？」
すると、おばちゃんは、「そう、ここがトポスの跡なんよ‥」
主婦の店ダイエー薬局は、スーパーダイエーになり、やがてトポスに業態変
更し、店を閉じた。







今市商店街を北へ進むにつれ、人影がまばらになる。
脇道に入って、住宅街を歩いてみた。間口が狭い一戸建てや古い集合住宅が
並び、大阪の下町情緒を感じさせる。
メインの商店街に戻ると、道がかぎ状に曲がっているところにぶつかる。
時間つぶしに左折してみると、通りの名が「森小路京かいどう商店街」に変
わった。歩いていると、うなぎ弁当の店の前に「京かいどう」と刻まれた石
標を発見。京橋を出発した旅人はここ千林を通り、守口・枚方を経て伏見へ
と向かったのだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（続く）








　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
◇「力餅食堂」千林店　　大阪市旭区千林２－１５－２９　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　カツカレー丼　　　６８０円